創業百五十周年を迎えるメゾン ランセルは、十九世紀のアーカイブを再び開くことはしませんでした。記念を託したのは、はるかに若いピース、2006年に生まれた「プルミエ・フリルト」です。
二十年あれば、コードになりうる
1876年以来、メゾン ランセルはパリの革製品の世界で確かな位置を占めてきました。最も古いわけでも、最も語られてきたわけでもありませんが、一世紀半を通じて通りを離れなかった数少ないメゾンのひとつです。その長い歩みを祝すにあたり、メゾンは二十世紀初頭のアーカイブ作品を引っ張り出すことを選びませんでした。拠り所としたのは、はるかに新しいアイテム、2006年に発表された、非対称のフロントポケットを備えたバケットバッグ「プルミエ・フリルト」です。
この選択は、歴史の深さと同じほど、認知の速さが重んじられる時代を映しています。「プルミエ・フリルト」は、それを携えるメゾンほどの年齢ではありません。二十歳という年齢は、古びることなく、見慣れた存在になる時間を得たバッグのものです。非対称の外ポケットは一目でそれと分かる特徴であり、目立つロゴがなくても見分けのつくアイテムにしました。モノグラムの過剰さで識別されることが多い業界にあって、これは稀なことです。
ひとつのシルエットに十五のエディション
二十周年は、メゾンの百五十周年と重なります。これを機に「プルミエ・フリルト」は十五の限定エディションで展開され、新色「ルージュ ランセル」をまといます。これは単なるシーズンごとのバリエーションではなく、メゾンの色です。十五のヴァージョンはそれぞれ、メゾンの語彙の一要素を自分なりに取り入れていますが、そのどれもが単独で百五十年の歩みを要約しようとするものではありません。華々しく記録された唯一のピースをつくるのではなく、バリエーションを重ねることは、反復による認知という戦略を物語っています。定着させるべきは、各エディションの細部よりもシルエットなのです。

詳細
プルミエ・フリルト:非対称のフロントポケットを備えたバケットバッグ、2006年発表。
周年:限定15エディション、新色「ルージュ ランセル」。
メゾン ランセル:1876年創業。
周年は回顧ではなく、バトンである
百五十周年の記念を、わずか二十年の歴史しかないアイテムに託すことは、前世紀の創業モデルを持ち出しがちな、メゾンの記念行事のごく一般的な論理を逆転させます。ここでは逆に、新しいものが遠いものへのバトンの役割を果たします。この姿勢には賭けが伴います。現代のアイテムが持つ即時の認知が、百年を超えるメゾンの記憶を薄めることなく担えるかどうか、という賭けです。そこには商業的な冷静さもうかがえます。二十世紀半ばのランセルを知る現在の顧客は少ないものの、「プルミエ・フリルト」のシルエットをすでに知る顧客は多いのです。
二十年後、「プルミエ・フリルト」が今度は二百周年を担うことになるのか、それともそれまでにメゾンが次のバトンを生み出しているのか、それはこれから見えてくることです。
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